顕彰会について

郷土、茨城の先人、長久保赤水、生誕300年記念の年(2017年)を迎えて

 外務省のホームページで、竹島をクリックすると、長久保赤水(1717~1801)の日本地図『改正日本輿地路程全図』が目に飛び込んできます。日本政府が韓国との領土問題で、江戸時代の中期に竹島が日本領として描かれている最古の日本地図として主張し、すでに、世界に公表されているものです。ところが、この『改正日本輿地路程全図』が、「今だに、国の重要文化財として指定されていないのはおかしいだろう」との声があがっていました。「なるほど、そのとおりかも知れない」とその時、私もそのように思いました。

 その後、活動を続けた結果、令和2年(2020年)9月30日に、長久保赤水関係資料693点が国の重要文化財に指定されました。

 

茨城県指定文化財『改正日本輿地路程全図・初版』 83.3×134.3㎝

高萩市歴史民俗資料館所蔵(長久保和良氏寄贈)

 

 長久保赤水顕彰会では、高萩市や県内の皆さまとともに、(当時)高萩市の指定文化財であった916点の地図や書籍、手紙などの長久保赤水関係資料を顕彰し、生誕300年記念の年となる2017年11月6日までに、茨城県指定文化財にしていただけるよう、思いを一つにして様々な活動展開を継続しておりました。

 当時から顕彰会では、赤水先生が残された、和紙に手書きの墨や朱書きの書込みがある地図原稿などは、茨城県指定文化財のみならず、当然、国の重要文化財としてふさわしいものと考えていました。長久保赤水関係資料が国の重要文化財指定となり、その念願がやっと叶ったことになります。今後も、一歩ずつ一歩ずつではありますが、赤水先生の人間性と、その業績を明らかにしていきたいと考えています。

 

 

マンガ『長久保赤水の一生 付赤水先生為学入門抄・志学警 現代語訳』などを発行

 長久保赤水顕彰会では、今までに、マンガ『長久保赤水の一生 付 赤水先生為学入門抄・志学警 現代語訳』、マンガ『長久保赤水の生涯 付 長久保赤水海防意見 現代語訳』やマンガ『長久保赤水物語』を発行、更に赤水の書簡(手紙)などを収録した『續長久保赤水書簡集 現代語訳』『長久保赤水書簡集 付 芻蕘談 現代語訳』『續續長久保赤水書簡集 現代語訳』を発行しました。

 また、赤水の知識の一端を知る『長久保赤水と山本北山~漢詩論をめぐって』『長久保赤水の天文学』など多数発行してきました。この他、国の重要文化財指定を記念した『改正日本輿地路程全図』原寸大レプリカ(両面刷り)、『長久保赤水 オリジナルクリアファイル』など記念事業や様々な節目に合わせ、「長久保赤水」について知っていただくものを発行してきました。(※詳細は「書籍・発行物など」をご覧ください。)

 

『續長久保赤水書簡集』『長久保赤水書簡集』

 

 日本を代表する「江戸時代の儒学者、天文・地理学者、農政学者」であり、水戸藩6代藩主、徳川治保公の侍講侍読を務めた赤水先生。墓石には「水戸藩前講読官」とあります。今でいえば、学問を教える役割と、いろいろな政策を提言して、それを実現させていく政策アドバイザー、特別補佐官のような役割を果たしています。農政改革はもちろん、藩政改革をも実現させています。数多くの漢書などを読みこなし、(いにしえの中国の聖王たちの教えを学び、藩主、治保公の藩政改革に取り組む道の下ごしらえの役目を果しています。

 また、13歳の藤田幽谷(藤田東湖の父)を水戸藩の神童藤田と、日本全国の当時の一流の著名人たちに紹介しています。さらに、同じく儒学を教えた門人、高橋又一郎とともに、後の彰考館総裁へと育てあげました。この赤水先生は、儒学者として水戸学を幕末の人々につなぐ役割を果たしています。

 

 

赤水資料の歴史・観光資源としての再認識、国の重要文化財に指定

 生誕300年は、長久保赤水関係資料の歴史・観光資源としての再認識の良い機会であると同時に、国指定文化財に匹敵するものであることを、多くの皆さまに広く認識していただく良い機会と当時は考えていました。

 赤水は、61歳まで赤浜で農業をしながら学問に励み、20年余の歳月を費やして、日本地図を完成させました。61歳の時、藩主の住む江戸の水戸藩上屋敷の儒者長屋に移り、その後、大坂で日本地図や中国地図、世界地図、中国歴史地図帳を刊行し、さらに、大日本史地理志の編纂などの仕事に取り組み、81歳で郷里の赤浜村(高萩市)に戻り、85歳で亡くなりました。

 

茨城県指定文化財 『大清広輿図』 188×183.3㎝

高萩市歴史民俗資料館所蔵(長久保和良氏寄贈)

 

 長久保赤水顕彰会創立時(1992年)に121名だった会員数は、赤水生誕300年記念や国の重要文化財指定を経て、2021年12月末には北海道から沖縄まで全国に広がり、776名と大幅に増えました。2022年は長久保赤水顕彰会創立30周年記念の年にもあたり、会員数1000名を目指して活動を展開しているところです。

 今の時代に出来る事を確実に進めていきたいと考えております。ぜひ、皆さま方のご協力とご指導、さらには、長久保赤水顕彰会の会員となって私どもの背中を押していただければと思います。重ねてお願い申し上げます。