伊能忠敬が水戸の長久保赤水が居ながらにして地図を作れたことには非常に感心すると言っていた…小宮山楓軒『懐宝日札』

伊能忠敬が水戸の長久保赤水(せきすい)が居ながらにして地図を作れたことには非常に感心すると言っていた…小宮山楓軒(ふうけん)『懐宝日札』(かいほうにっさつ)

2017年7月18日(火)に、高萩市の中央公民館で、長久保赤水生誕300年記念事業実行委員会(石平光会長)の第2回目の会議が開かれた。その折りに、長久保赤水顕彰会顧問の長久保源藏先生が、小宮山楓軒の『懐宝日札』にある伊能忠敬の長久保赤水の記事をご紹介された。

後日、インターネットで調べてみると、伊能忠敬研究会が発行している「伊能忠敬研究」2015年、第76号 ― 小宮山楓軒『懐宝日札』を読む ― 勘ケ由、軽躁ノ人物ナリ という前田幸子氏の書かれた次のような記事がヒットしたので、抜粋して紹介する。

 

―小宮山楓軒『懐宝日札』を読む―勘ケ由、軽躁ノ人物ナリ 前田幸子

地図・測量に関する記述  

「水戸ノ長赤水坐ラニシテ」

○伊能勘解由、官命ヲ奉ジテ、日本地図ヲ製ス。人ニ話シテ曰ク、予諸州ヲ跋渉シテ製スルニ、甚ダ難キコトヲ覚フ。水戸ノ長赤水坐ラニシテ、ヨク図ヲ製スルコト、甚ダ感ズルニ堪ヘタリ。(第3冊)*注:第3冊は文化9年7月起筆(著者49歳)

【大意】伊能勘解由は幕府の命令で日本地図を製作している。人に話して「私は諸州を歩き回って実測で地図を作っているが、非常に難しいと感じる。水戸の長久保赤水が居ながらにして地図を作れたことには、非常に感心する」と言った。

【備考】◇長久保赤水(1717―1801)は常陸国高萩の人。水戸藩儒者、各種の地図や伝聞情報を収集し、それらに基づいて日本図や世界図を製した。安永8年(1779)『改正日本輿地路程全図』を刊行(ママ・実は、翌年、1780年の春に大坂で発行された)。市販されて広く普及し、明治まで長期にわたり使われた。

◇忠敬も赤水図を所持しており、測量(注18)にも携帯して随時参照している。(注19)

◇赤水は晩年郷里赤浜に帰り、享和元年(1801)7月25日に85歳で没した。忠敬はその数日後の8月3日に第2次測量で当地を通過した。『測量日記』に「赤浜村、長赤水の出し村なり」と記し、敬意を表している。

*注18 『江戸日記』文化11年9月4日

*注19 佐久間達夫『測量日記3』120頁文化七年五月七日、128頁文化7年6月18

**小宮山楓軒**(1764-1840)

水戸藩士、漢学者、農政家、民政家。名は昌秀、号は忍軒、致仕後に楓軒。明和元年(1764)生まれ。師は水戸藩の碩儒立原翠軒。20歳で家督を継いで彰考館に入り『大日本史』の補修・校訂に従事、26歳で藩主の侍講となる。36歳の時提言が認められて南部の郡奉行に抜擢され、以後21年間紅葉村(鉾田市)に住み数々の勧農殖産政策を行って荒廃した村々の立て直しに顕著な実績をあげた。また小川稽医館(小美玉市)や延方学校(潮来市)を設置。延方学校には窪木蟠龍を招聘し、農閑期に巡回講話を催すなどの文教政策を実施した。57歳で郡奉行から留守居物頭に転じて水戸に帰還。その際、離任を伝え聞いた村民が見送りに2里余の道を埋め、別れを惜しんで号泣したという。のち藩主斉昭公に登用され町奉行や側用人を勤めたが会沢正志斎・藤田東湖ら改革派と対立、天保9年致仕して同11年(1840)77歳で没した。生涯を通じて史書・地誌の編纂、文献の筆写に務め、編著書は千余巻に及ぶ。

**『懐宝日札』15巻15冊**

楓軒が郡奉行在任中の文化8年から留守居物頭となった翌年の文政4年(48歳から58歳)の間に随時書き留められたもので、国立国会図書館に自筆本が所蔵されている。他に伝本はない。本稿の原文は中央公論社『随筆百花苑』第3巻所収、朝倉治彦編、小宮山楓軒「懐宝日札」に拠った。

 

* 大変、驚いた。びっくりだ!! あの伊能忠敬が長久保赤水に感心していた。しかも、赤水図と呼ばれる『改正日本輿地路程全図』を測量にも携帯していたという。大変な、驚きだ!!

 

 

 

 

企画展「手描き地図の世界」入場無料

開催期間 2017年7月28日(金)から12月17日(日)まで

開催場所 つくば市 国土交通省国土地理院「地図と測量の科学館」

開館時間 9時30分から16時30分

休館日  毎週月曜日。但し、月曜日が祝日の時は、翌日火曜日が休館となります。

*なお、10月28日(土)・29日(日)は臨時休館(予定)

お問合せ 「地図と測量の科学館」☎029-864-1872

「先人の手書き地図を紹介するコーナー」で、長久保赤水が作製した27点の地図などが紹介されています。皆さんも、企画展「手描き地図の世界」へ夏休みの自由研究やご家族連れで、ぜひ、一度、お出かけください。